午後ロー、それはテレビ東京の番組名、映画をながしてくれる枠。ただし最近ドラマの再放送が多すぎて辛い枠。
テレビ東京 CINEMA STREET 午後のロードショー:テレビ東京
最近ほんとにドラマの再放送が多くて、非常に難儀しているのだが。
基本的には、ちょっと昔の洋画をながしてくれる、とてもすてきな、クールでスイートでガッツのあるクレイジーな枠だ。吹替版の放送であり、時々昔のオリジナル吹替版を、さらっと流してくれたりするので、ちょっと困る。そういうレアもんを放送するときは、もうちょっとアピールして。頼むわよ。
午後ローに本格的に注目しはじめたは、無職になってから。それは、崇高なる導き手、聖地、友、すべての無職と病欠児童のための、めくるめくわんだふるタイム。
おっぱいなんてデフォだったし(ただしサメ映画)、真っ昼間からベッドシーン流すし(サメでないなら巧妙におっぱいは映らない)、そして大塚明夫さんの出現頻度が異常に高い。(厳密に集計をしたら違う人がいちばんかもしれない。てきとう)その理由のひとつが、ニコケイの映画がしょっちゅう放送されるからだ。
ニコケイとは、ニコラス・ケイジのことである。有名俳優であり、ヒットした映画は多い。日本の知名度も、まあまあ、このご時世でもあるほうだ。
と思う。
明夫さんが吹き替えている俳優は、たっくさん、いるが、ニコケイもそのひとりなのである。
ニコケイがどれくらい演技がうまい人なのか、すぐれた俳優なのか、ぶっちゃけ正直なところワシにはわからん。しかし明夫さんが吹き替えればもうオッケーなんである。オッケー、オッケー、かなり問題ないどころか、むしろ優れた部類に入る。たとえ明夫さんが吹き替えても、「これは……」とソッとチャンネルを変えてしまう他の俳優のシリーズもないことはないので、そうするとニコケイは仕事するスターであるといえるかもしれない。
大塚明夫というと、いまの若い人は(手垢のついたフレーズ)渋い役柄や声のイメージが強いかもしれない。自分が勝手に、このひとまじほんとすげえ!!、と『紅の豚』である。四半世紀ぶりに声優さんを意識していろいろみるようになってから気付いたので、わりと最近知った配役だけど。軽さも十分にあるから、渋いのもかっこいいのである。
ニコケイは、その明夫さんの軽さを楽しめる。ナショナル・トレジャーとかファミリー向けぽい映画だと顕著である。他にもいろんな映画あるけどさ。ナショトレはニコケイがやたらとぺらぺらしゃべる役なので(知識が多いから)、明夫さんのしゃべりも堪能できる。
ニコケイはアクション映画も多い。もちろん明夫さんもアクション映画もいっぱいいっぱいやっている。かっこいいにきまっている。どうみてもニコケイ本人よりかっこよく見える…!!
さあ、ニコケイとはなんなのか。実在するのか、いまもいてはる人なのか?、という揺らぎが生じることさえある。大塚明夫氏の吹替がうますぎる、かっこよすぎる故だ。午後ローで吹替ばかりを流し見しているから、こんなことになる。おそらくはこの先も、かなりのことがなければ、大画面で、劇場のスクリーンでニコラス・ケイジを見ることはないだろう。そうなれば当分のあいだ、フワフワしっぱなしである。
午後ローはそもそも、幽玄的な体験をさせてくれる時間体である。シュワちゃん吹替版に熱くなる正統派の楽しみ方もあれば、見終わったあとに、「時間かえせゴルァアアアア!!」と自分の怠惰を棚にあげて叫ぶ楽しみもある。サメにお尻を噛まれるキャッキャウフフな怪しい若いカップル達をみたり、主人公たちの後を横切るでくのぼーのようなおそろしいエキストラを大爆笑したり、どうみてもハリボテのサメやワニを愛くるしいと思ったり、チェーンソーとサメが戦うのを応援したり。と、油断していたら、本気で怖いやつもたまにでてきたり、本当に面白いちゃんとした映画も、たまああに、放送されたり。
いまはいろんな配信サービスができて、いろんな映画をみられるようになっているが、それはすべて、自分でジャンルを指定したりタイトルをキーワードにして、探しにいかなければならない。そんな世界においては、本屋を廻遊して面白い本に出会えるような偶然、ぼんやり惰性でチャンネルをあわせてB級だがツボにはまる映画との出会いは、なくなっているのである。
実に残念。
日テレはバカの一つ覚えのように、ジブリとハリポタをエンドレス再生するだけの末期的状況だし。頼みの綱は、テレ東だけ、午後ローだけなのだ。(吹替でこそテレビでの映画放送の醍醐味であるという大前提。)
しかし午後ローもここのところ、自社の二時間ドラマの再放送にしょっちゅうのっとられているという危機的状況。これはもしかして、BSのほうで、午後ローとそっくりなラインナップというか、そこへ移動してしまったかのような番組をやっていて、そういった大人の事情か制作上の都合などが……。
BSのほうはそれはそれでよい。夜にみられるのは、都合がいいというひとが多いかもしれない。
だが、平日真っ昼間に、
「いったい俺は何をみたんだ……2時間何をしていたんだ……」
と、愕然とするような、そのリスクの高い冒険を、体験したいのである。明るい午後の陽射しの下で。
というわけで、テレビ東京さんは、午後ローの枠は、びしっとばりっとシャシャっときちっと、主に洋画を、できればオリジナルの吹替版を、流し続けてほしいのである。そしてそういう吹替版を放送するときは、ちゃんと告知をしっかりするよおに。