茶ぶろぐ

おとなのライフスタイル@TOKYOブログ

スポーツの熱狂とエンタメの熱狂

 スポーツとエンタメ。世の中的なカテゴリーはいっしょくたで、以前はなんでいっしょにされるんだよと悪態をついていたけど、まあいっしょだよなと、近頃ようやく思っていた。が、熱狂の度合いとかタイプがぜんぜんちがう、と世界選手権を観に行って思った。


 簡潔にいえば、(個人の感想です)

「スポーツのほうがより直感的で幅が大きく、瞬間度が高く、ある程度期待されていても、不確定性の高い熱狂がいきなりくる。」

なのデス。
 音楽は特に、オープニングからだんだんテンションをあげていく演出があったとしても、だいたい2時間から4時間??のあいだは、演出や曲順は緩急がつくのが普通で、かつ、1曲のなかでも、だんだんもりあがっていく〜〜みたいなところがある。
 お芝居もイントロからいきなり「どん」と熱狂をえるようなことは、あんまりない、というか、無理です。積み重ねて行って、やがて決めのところでの、緊張感の続く場というのはあれども、それは観ながら「おおおお!」とか叫んじゃうようなもんではない。手に汗握るようなすごくはりつめた状態がぐぐっと続くようなイメージ。


 スポーツは、もしやサッカーや野球など、試合開始いきなり得点を得たりしたら、もうスタジアムは興奮のるつぼと化す。音楽でもるつぼはないことはないが、「ぶちっ」とキレるような瞬間的な熱狂よりも、ある程度継続的な熱狂となる。スポーツはそこがちがう。平均的に「いい競技」をして観客を楽しませてくれるのがプロのスポーツだけど、そうでないスポーツは熱狂が発生する確率は低い。プロでないならスポーツする側も、客を喜ばせなければならない義務はない、たぶん。だからこそよけいに、熱狂がおきたときのそれは、おそろしいものになる。
 しかも、応える義理がないのに、期待にこたえてやってしまう、おきてしまうところが、上位の選手や大会の恐ろしさだ。


 まじ「怖い」と、会場で何度も思った。
 それは3グループがはじまってからだ。選手のレベルも高くなると、急激に会場のボルテージがあがる。その予兆は6分間練習。まるで観客達もアップをしはじめるがごとく、練習でくるくるじゃあんぷをする選手にあわせて、声をだし拍手をする。それはまだわかる。実際にそこで見事なジャンプをきめるのだから、それに反応して声をだす。そして、そのテンションのまま試合にはいる。それまで「ぜんぜんなんにもきこえなかった」客席から、選手へのかけ声がとびはじめた。
 その前の2グループまでは、良い演技のときやごひいきの選手のときは、演技の終了後に、スタオベとか声をかけるのはあった。はじまるまえの声がけは、ほとんどなかった。きこえたのは、おそらくは選手と同じ国の人の声ばかり。
 しかし、3グループになると声がとびはじめる。いままでなにしていたんですか、いたんですか??、というくらいそこらじゅうから声ががんがん飛ぶ。けっこうふつうのおとなの女の人の、しかしちょっとドスのきいた声。黄色い声援とはいえないし、いままであんなの耳にしたことがない。
 それらのテンションが、一瞬で、一気に、100%を超えたのが、宮原知子選手のとき。わたしは新参者も甚だしいので、この選手がどれくらいすごくて偉大なのか、あんまりしらない。名前は知っていたので、知らないひとに名前を知られているということは十分にすごかろうの検討はつくけど、どれくらいすごいのだろうかということは、会場の恐ろしい声量、勢いですぐに分かった。


 それがめちゃくちゃ怖い。宮原選手がびしっと決めれば(じっさいすごかった)

 ゴヲッ

 と空気が動くような声がする。それがちょっと門外漢には気持ち悪いくらいのタイミング。ジャンプを正しく認識しているせいだろうけど、ジャンプが決まったわ〜と(特に運動神経の悪い伝達と反応に遅延が発生気味の)素人が認知認識するまえに、

 ドオッ

 となるので、それがめちゃくちゃ怖いのだ。


 観客がほとんど女性による、女性の選手の会場でこれである。男子の競技だとどうなるか、考えただけでもおそろしいし、あるいは、欧米のサッカーなど、男性ばっかりのところでこの

 ト゛ヲ゛ッ゛

 が起きるのは、想像しただけで恐怖だ。


 その興奮はわかる。本当に直感的にすごいのだ。選手の動きのすばらしさは素人でもわかる。説明はぜんぜんできないけど、本能的に目をうばわれるし、胸がすくような爽快さがある。興奮と気持ちよさはセットだ。恐ろしい。(だから「ハマる」ということが発生するのだろう。)
 素人が「おー」と驚いている間に、ちゃんとしたファンはもうジャンプとほぼ同じタイミングで声をだすのだ。


 怖かった。


 男子の試合より、正気を保っている観客は多いだろう。みるからにおかしいひとなどはいない、いっけん普通のひとがほとんどだ、みためは。でも、声をだすタイミングや快感を知っている人がほとんどなのである。フィギュアスケートファンには気をつけろ…!


 どんな場合でも、ひとは見た目によらぬもの。
 アニメとか漫画のオタクは、以前ほどではないにせよ、見るからに感があり癖があるように言われるけど、スポーツの熱狂的なファンというのは、そのスポーツにおいて、完全にジャンキーなのだ。外見ふつうで中身それ。よほど危険じゃないか!(見るからに変なひともいるにはいる)


 と、誰に向かってなんの言い訳と防御を張ろうとしているのか。


 なんとなく、スポーツ好きなひとって、健全健康なイメージがあったけど、ぜんぜん違う。興奮の仕方がちがうだけで、酔っぱらい度や依存度はサブカルヲタとまったく同じだ。