脊髄反射でオブラート

chaoruko@HatenaBlog

変装するばいきんまんのかわいさは異常

アンパンマン』の永遠のライバル、ばいきんまんは、ときおり変装をして他人のふりをして誰かをだまして、ひと(?)をアンパンマンを敵認定へと教唆したり、他人(?)の生産物の略奪を画策するときがある。「他者をだます」と「他者のブツの略奪」では、前者は出現回数は少なく、映画など長編でもちいられることが多い。だます対象は、「すごくでかい」とか「すごくつよい」とか、かなり圧倒的優位に立つスペックを備え、かつ、引きこもっていたり、遠方から来た新参者だったり、生まれたばかりの未成熟な状態である、という、だまされるのもいかんともしがたい事情が明確にしめされる。アンパンマンはたいていいちど圧倒的なパワーの前に瀕死状態となるが、最終的にはだまされた者本人の劇的な成長と意識改革により、アンパンマンが悪であるという誤解は解消される。
 教唆に比べると、「ブツの略奪」はテレビシリーズでも頻繁に行われる。なぜならば、『アンパンマン』にでてくるあまたのキャラクターたちは、圧倒的に食べ物属性キャラが多く、たいていが、質量保存とか等価交換とか(てきとう)関係無く、自らが自らの属性のたべものを生み出すことができるからだ。ばいきんまんの略奪を試みる行動のはじまりはたいてい、ドキンちゃんの要請であることが多いが、実はばいきんまん本人の動機による場合も非常に多い。はらへった。
 たべものを奇襲して奪い去ればいいのに、たいていは欠品だったり、なかなか補充されなかったりで、ドキンちゃんのプレッシャーもあるが案外せっかちで、ばいきんまんは素性を隠して変装し他者になりすまして、たべもの生産製造キャラに接近し、なんとか生産製造をさせて、成果物の強奪をはかるが、たいていは最後まで穏便にはおわらず、最終的に強奪していこうとする(そして失敗するデスティニー)。その変装は通常へったくそなバッレバレな変装であるが、高度にかわいく変装することがある。ばいきんまんはなりすましの際に、変装が高度であるほど、本人のキャラクターから乖離する。どの程度アイデンティティーの揺らぎがあるのか、ターゲットのキャラの性質によって、左右される、かわいくておしがつよいものには、あっというまに流される。オッサンか。そうすると、ターゲットとともに行動してる際、なんと、なりゆきでその「お手伝い」をしてしまうことがあるのだ。たべもの生産製造プロセスの手伝いパターンはよくある(気がする)が、できあがったものを「みんなにわける」という過程にすら荷担するのである(ターゲットそのものを拉致監禁するパターンもあるけど)。

  1. たべたい(ドキンちゃんの緊急要請)
  2. たべものを生産製造する特殊能力をもつ者をみつける
  3. 変装してターゲットに近づく(たいていはたべものが枯渇したタイミング)
  4. ターゲットのたべものの生産製造の手伝いをする(←わかる)
  5. たべものの配布を手伝う(←何故か)


 この、変装開始からばいきんまんであることが露呈するまでの言動、行動、仕草が、とてもかわいい。ターゲットの性質に巻き込まれているほど、ばいきんまんは発言のタイミングを逃し、変身したまま、ターゲットの周囲を右往左往しながら、しかし妙に親切に立ち動いていたりする。それがかわいい。
 しかしこの「ばいきんまんがかわいい」というのは、アンパンマンワールドにおいては頻繁に利用されるものではなく、出現回数を高度にコントロールされている性質であると思われる。「実はいいやつ」ということは、みんな知っているけれども、長編ではときおり邪悪すぎる悪が他に用意されてばいきんまん共闘する場合もあるけれど(たまーにたまーにあるよね)、基本は理不尽な「お前のものは俺のもの」的ふるまいをして最後にはアンパンマン一味からボッコにされるキャラクターでなければならないからである。
 アニメとしてのクオリティの高さ、とくに空中戦アクションシーンのすばらしさは、長編が圧倒的ではあるが、キャラクターの猛烈な魅力は、テレビシリーズのひとつひとつのエピソードの積み重ねである。変装するばいきんまんのかわいさは、そういった積み重ねのなかで時折顕現するまぶしいきらめきなのである。


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