脊髄反射でオブラート

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ドラマ『1942年のプレイボール』が面白かった

1942年のプレイボール | NHK 土曜ドラマスペシャ
www.nhk.or.jp


 なんとなく見はじめたら、面白かったので、勝地涼がでていたので、主演の人がよかったので、なんとなくだいたい最後までみた。放送は7時30分から8時45分。90分もないので、少々巻き巻きの展開がいい。終戦のころになると、NHKは戦争に関連するドラマを放送している。今回の話は、実在した戦前戦中戦後に野球で活躍した野口四兄弟のお話、らしい。タイトルの1942年というのは、まだ戦中で、なんかしらんけど、たくさん投げた話らしい。


 自分は野球は興味がないどころか、どちらかというと距離をおきたいほうである。こんなに人気がさがっても、まだまだあらゆるリソースをかっくらう野球。プロ野球高校野球も好きではない。文武両道はありえないとかがのさばる高校野球なんてほんとイヤ。無論競技そのものには罪はない。そういう感じなので、ドラマは野球については思い入れなしにみた。


 勝地涼さんは、前髪クネ男の印象が強いが、もともとこういう役が多い人らしい。長男の、イケメンで繊細で落ち着いた感じ、すごいイイ! いいね! いい役者さんだ!!
 驚いた主演の太賀さん。名前は最近みかけていたけど、こんなにうまいとは。しゃべり方とか、最高。
 他のキャストも、びしっと隙無く手堅い丁寧な作り。


 以下それなりにネタバレあり。



 しかし75分ドラマなので、巻き巻きで、印象深いシーンをつないで物語はざっくざっく進んでいく。ときおりでてくる土管のある原っぱのシーンとか、屋外がよかった。ちょっとわかりやすすぎるところもあるけど、戦争から帰ってきたお兄ちゃんと、他の三人がむきあってしゃべるシーン。三人は座っている。野球以外の話をしようとするが、話すことがなくて、野球の話になる。やせこけたお兄ちゃんは厳しい顔で立っている。言うまでもないが、もう容易に同じ所に立てない経験をしてしまったのだ、お兄ちゃんは。


 まあ最後はたくさん投げる話を、無理矢理詰め込んだ感じで。ドラマって難しい。原作はおそらく、もっとうまい感じになっているのだろうが、ドラマは、そこへ至るまでの、時間を往き来しながら、四兄弟と恋のエピソードの積み重ねがとてもよかった。(だって、お兄ちゃんに遠投させるシーンがヤマだった。)いかにも戦争ぽい台詞やシーンが少なくてよかった。
 戦争を描くなというわけではなく、長くろうろうと語るようなシーンになると、どうしても、間が抜けてしまう。説教臭くなる。戦争に関するドラマが抱えているジレンマだと思うが。誰かひとりにえんえんと語らせても、たいして説得力がない。


 言葉、光と影、表情、風、空気、動作、細部を予算のある限り丁寧に。そういうことが、喜びと悲しみを深くさせる。
 音楽も面白かった。和風の楽器か音色がはいっていて、その音色を生かしつつもジャズっぽいかんじ(表現する語彙がない)。楽器の種類がたぶん少なくて、シンプルな鳴り方や間合いが、軽妙洒脱だったり、コミカルだったり、逃れられない緊迫感があった。脚本や芝居と一体感があった。


 ちょっとおしかったのは、ナレーション。三宅さんが悪いというのではなく。記録映画ぽい雰囲気を出すには足りないし、物語のナレーションとしては説明くさすぎる。最後のナレーションも、四兄弟を上からか下からか、順番にその後を説明したほうがよかった。三男が戦死することを最後にしたり、「四兄弟の夢は果たせなかった」みたいなまとめ、ここまでいい展開できたのにナレーションに言わせんじゃねえよ台無しじゃねえか、である。。


 欠点がすくなくて、長所が多い、すばらしいドラマだった。ミサイルとかなんとか胡散臭い世の中で。なんかもう、まじ、野球ファンはもっと野球を愛せよ。投げ続けるのって、軍国主義的発想じゃないか。投げ抜いたことを賛美するのではなく、長い時間なげてよろよろになって思わず笑ってしまうほどだったというボーダーな感じにしていたけど。頭が偏った人がみたら「投げ抜くことがいい!」みたいに言うじゃないいの……など、そんなこんなをうまくまとめて乗り越えて、テレビドラマの良さと役者の好演を引き出した良い作品だった。