茶ぶろぐ

おとなのライフスタイル@TOKYOブログ

『腐女医の医者道!』ぎゅうぎゅうにつまった医者の日常


 書店で見かけて2度目に、ぱらぱらめくって、気になるなら買ってしまえよ、と買った。


 とても中身がこゆい。絵はいわゆるコミックエッセイ系の描き込みがそこまであるわけではない絵だけれど、内容はすごい。さすが医者、しかも外科でヘリコプターにも乗るし、腐女子だし、子どもが二人。そりゃバイタリティがある人にちがいないけれど、でもそれにしても読みごたえがある。するめみたいに読みこみごたえ。

 自分は最近手術をしたので、病院への親近感が高い時期。読むタイミングを誤ると鬱になるかなと思ったけど、これは元気がでる。

 病院というのは、「健康な生活」からは逸脱した非日常の場だ。病院にいくのがいやなのは、匂いとか痛いめとか苦いとか、そういうことにくわえて、日常を逸脱して、はじきだされてしまうからだ。大きな病院には、外来が日常で、入院が非日常という、もう一つの逸脱がある。そして入院が日常で手術などクリティカルな状況が非日常、とだんだん深入りしていく。映画『インセプション』で、夢の中で夢をみてまた夢をみて、とどんどん深入りしていく感じだが、そんな感じ。通院、検査、入院、準備、手術。ここでまな板の上のコイになり、そこからしばらくは全然ひとりでは生きていない状態になる。そして、立ち上がる、歩く、病棟を歩く、病院内を歩く、退院する、というふうに戻ってくる。
 治る病気の患者はそんなふうに、行って行って帰って帰ってくるわけだが、病院で働く人たちは、そこが日常である。人の命を預かる日常。その人にも、私生活があり、趣味があり、生きるためのエネルギー補給が必要である。とくに医者はそこらへんのメリハリがすごいできる人が多いし、できないとやってられない仕事だろう。


 この本は、生態が謎がちな、どうも神がかってみてしまう外科医の日常を縦横無尽にいきいきと描いている。医者やオタクや病院に、何かと偏見や思い込みがあることも気づかせてくれる。老若男女、健康な人もそうでない人も、読んで笑って泣いて元気をもらってほしい。