茶ぶろぐ

おとなのライフスタイル@TOKYOブログ

『昭和元禄落語心中』のマンガとアニメと

 以前から気になっていた『昭和元禄落語心中』のアニメ化で、原作が一部無料で読めたので読んだらすごい面白くて、「アニメたのしみぃい!」とめっちゃくちゃ期待したら、期待しすぎた。あっちゃこっちゃで大絶賛のコメントをみかけるのに。期待しすぎはいかんかった。のだめも、もしマンガを読んですぐのドラマだったら、イメージ違うとか言っていただろう。映像化は自分のなかで熟してからみたほうがいい…。
 与太郎の声が、どうしてこの人の声なのかなーと思っていたら、落語のところがうまかった。つーかうますぎて新人なのにおかしい、と思ったり。第二回の山ちゃんはいい。うまい。ききたくなる。石田さんがだめなわけじゃないんだけど、うまいはずなんだけど。(山ちゃんの声優はわりと好きだから、フィルターはかかっているかもしれない。でも石田さんも好きだよ…??)


 小説など文字では。音楽の表現はわりと厳しい。その世界の音楽を全然知らない場合、かなりうまく書かれていないと伝わってくるものが少ない。マンガは意外と、音楽の表現にむいている。クラシック、ロック、様々な音無き音楽の世界を無限に展開する。音は耳で聞くけれども、視覚的表現も非常に重要で有効だからだ。(目の見えない人がきいている音楽は、同じで違うものかもしれない)


 落語は音楽ではない。落語のドラマはたまにあるが、そこそこそれっぽくみえるのは、所作をともなうからだ。落語家はどのようにふるまうか。役者はおそらく役者のスキルでそれをよみとき、それをそっくりに表現するというより、人が落語家の落語をみたときと同じような印象を与えられるように演技する。


 アニメの声の演技は、声の演技に特化している。目に見える部分は別の人たちが担う。やはり声だけで落語に近づくのは、予想以上に難しいことかもしれない。マンガの空気感がリアルであるからよけいに、落語以外のシーンも違和感がでてくる。無意識に質のいい時代劇の俳優たちの演技を脳裏に浮かべてしまう。しかも今シーズンは『ちかえもん』『真田丸』『大岡越前』と、ぜんぶえぬえちけーだけど、タイプは違うがとてもしっかりした時代劇が並んでいる。それとくらべると、落語心中のアニメは、なんか違う。マンガを読んでいてもそんな変な感じはしない。しかしアニメは、がんばらないとみられない。マンガほどひきこまれない。


 いやだからそれは、マンガ読んだ直後で脳が沸騰していて期待しすぎだから…!、と思うのだけど。


 ちかごろ「なんかちがう」というアニメと、抵抗なくみられるアニメがある。絵が苦手とかキンキンしたアニメ声は基本問題外、であっても、まどマギのように見ざるをえないものもある。好みではない絵や声は障壁ではあるけど、のけられる。アニメだもの。しかし昭和元禄アニメは、アニメの『境界のRINNE』と同じ気配がする。おもしろいはずなのにそこまでおもしろくない。昭和元禄のほうが声優のキャリアが上だが、それだけではない。ちなみにオルフェンズはおもしろいけどかったるいなーの典型である。(ガンダムは特殊だが)


 原作マンガの続きをどうやってよむか検討中で、話はおもしろい、キャストもいい、作画も悪くない。昭和元禄はむしろ絶賛する声も多い。だがRINNEのとき思った「え、もうちょっとうまくアニメ化できるよね…?」という何か。キャストやストーリーや絵ではなく、それ以外の理由で何か引きが弱い。何が悪いもわからんし。すごくよくできているけど。「ちはやふる」は絵とかストーリーとかそんなに好きじゃないけど、まぁ見られるし。


 一年後にいろいろ忘れてアニメをみたら、手のひらかえて大絶賛、すっかり違う感想を抱くかも知れないけれども。その程度のことだけど。こういうふうにひっかかるのは面白いなあと思ってメモっておく。


 実写ドラマの落語をきくとき、プロの落語家とは比べないんだけど、アニメの落語は、耳だけのジャッジになるから、すごくうまい耳のおくに残っている落語と、比較しちゃうのかなー、とも思う。山ちゃんの場合は、そのジャッジよりも、そのときのキャラクターをみたくなる度が高め。


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雲田 はるこ
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