茶ぶろぐ

おとなのライフスタイル@TOKYOブログ

『相棒』の最終回がつまらなさすぎて怒る

 平日の夜に、夜更かししてまで無理矢理見たのが、非常に悔やまれる内容だった。すっごいつまらなくて腹が立って、頭が爆発しそうなほどだった。
 
 そもそも大前提として、主人公の一人が実は悪だった、というネタは、納得できる絶妙な伏線を張っていない限り、おもしろくない。
 一億歩譲って、実は悪だったし伏線は張らない、を容認するとしても、それでも2時間弱かけてあのクオリティはふざけんなである。あの、つっまらないジャングルの孤島の映画を見たときのことを思い出した。あぁ、やっちまったな…。苦虫を噛んだ自分。その事実から目をそらしていた自分。(愛着をよせたものがおもしろくないことを認めるのがいつも遅すぎるのだ自分)
 
 カイトが犯人であるとほぼ断定できるようなシーンが、冒頭にでる。そこからどんでん返しなく、彼がやっぱり犯人であるとなる。謎解きプロセスは面白くない。やっぱりカイトは犯人ではないんだわ、と思わせる瞬間もない。なぜカイトが犯行に至ったかの動機の描き方が弱い。カイトが、けっきょく家は金持ちだけど頭の悪いぼんやりしたただの元ヤンにしか見えない。学習して学ぶ思考をもった人間に見えないし面は、ある意味サイコパスだがすごみはない。カイトのもつ正義感は、安っぽく、世の中に対してなんの役にも立たない。
 右京さんも今回は中途半端。犯人と分かれば残忍なほどに追い込むかと思いきや、おもしろくない。
 過去を思い出しての記憶再生シーンが多すぎてかったるいし。何回も何回も血みどろのシーンいれて尺を稼ぐひどい構成。過去の事件の説明を台詞でして、かつ何度も絵をいれるの。なにそれ? 2時間サスペンスドラマしかそのフォーマットはだめなんだよ。脚本の内容が足りてない証拠。
 
 もしかして、カイトはもともと最初から、そういうキャラクターの予定だったのだろうか? 唯一の伏線は、甲斐パパの人格破綻ぷりだ。そもそもゆがんでいて、どうしようもない親子関係。制作陣は、全体を通して、こういう頭のおかしい警察官僚や、薄っぺらい正義感をかざした馬鹿が、世界にのさばってますよ、ということを描きたかったのだろうか。

 何を描きたいかは自由だ。世の中には「どうにもならない現実」が多々あることも本当だ。
 でもだからといって、「どうにもならない現実」をどうにもならない現実のままフィクションに、何の工夫もなく描くのはだめだ。ましてやテレビドラマで。全然面白くない。創造する努力を怠っている。

 相棒の制作チームは、すでに創造性を失っている。映画はつまらなかった。カイトくんは3年もやって、新登場したキャラクターもろくに人格を出せなかった。石坂浩二がうすら怖いおじさんの役がうまいねぇ、とわかったくらいだ。成宮くんも真飛さんも使い方がもったいなさすぎた。彼らのキャリアの傷にはならないし、得たものは多かったと思うけど。

 その他のキャラクターは、いままでの積み重ねで、もうできあがっているものをやっているだけだ。(無論日々アップデートはされているけれど。本当に繰り返しているだけなら、観ていられる演技にはならない。)亀山くんが去って相棒がいない時期のエピソードを、再放送で時々見かけるが、その構成に特に不都合や不足分は何にもない。もうできあがっている。ミッチーは、相棒の世界的にはどうだったか知らないが、連続刑事ドラマで刑事を演じるには豪華で十分だった。完成されたキャラクターたちの世界に入っていっても、平気で応えられた。成宮くんがダメだったわけではない。キャリアが違うしタイプも違う。そこから新しい要素を生み出すことはできなかった。私は神戸くんの登場から見始めた典型的な後期の新参者視聴者だ。しかし、おそらく亀山くんが去る少し前から、新しいものは作られていないと感じる。それでも、すでに、サザエさんや寅さんに近い時空で、世間に話題を提供していた。それで楽しめたからそれで良かった。なのに、何年もやったあげくに、それを否定して放棄した。

 何が言いたいか、何がおもしろいのか、さっぱりわからない。駄作だ。最後には芸達者をあつめて「あいつばかだ」と陳腐に並べて言わせ、機内の右京さんの憂鬱な窓辺で終われば良かったのに、間抜けな飛行機の後ろ姿で終わり。

「相棒」といえども、水谷豊のためのドラマであるのは分かっている。そろそろどうやって終わらせるか、あるいは、2時間単発ドラマに戻るか、考えて欲しい。このまま終わっても良いかも知れない。それはそれで語りぐさになる。
 もしかしてきっちりした幕引きなど、ひけないもの、なのかもしれない。日本のドラマの制作現場というのは。亀山くんが去った次のシーズンからは、タイトルを『特命係杉下右京』にしていたら、役者さんたちが本当にくたびれるまで、ずっと続けられたかもしれない。せっかくあれだけのキャラクターをかかえて、少しずつ終わりに近づいている。役者より先にネタがつきてきたのだな。

 テレ朝はせっかくニチアサ枠をもっているのだ。制約とタスクと伝統多数の、必ず始まりと終わりがある物作りの現場で、みんな勉強しなおそう。そうしたら息を吹き返す可能性はある。
 天才でない限り、毎回傑作が書けるわけではない。だが長く仕事をしている人たちが、大事な節目の回で最低限のクオリティを維持できず、大失敗するのは、危険だ。組織として成長していない。終わりの始まりの音がより大きくなる。


 私がみていなかったころの『相棒』はどことなく陰気で陰湿で希望のない刑事ドラマだった。その暗さが多くの視聴者を得ていた。それは私の好みではなかった。おもしろくても観る人が多くても、私の好みではない。私にはわからないドラマが、戻ってきたのかもしれない。

 あまりに怒りすぎて、どうしたら妊娠と白血病発覚と、主要キャラが敢えてのバッドエンドで卒業するか、物語を考えてみた。確かに、確かに難しいよ。なかなか考えつかないよ。そもそも妊娠と白血病とか、両方ぶっこむ意味がわからない。最後に甲斐パパにくだらないことしゃべらせるのも、石坂浩二の無駄遣いだよ。集団的に催眠にでもかかっていたのか。
 カイトくんはもっとあばれて、アクションシーンがあって、もっとケガしたり暴れたりしたら、ビジュアル的にもっと萌えたと思う。せめてイケメンの泣ける殉職シーンを観たかった。

 ファンの期待に応えてなお超越するのが、人気シリーズの勤めだろう? 何を放棄して何を得たんだ君たちは。